「ごはんを作る20分だけ、どうしてもテレビに頼ってしまう」「動画を止めると大泣きされるのがつらい」——スマホやテレビとの付き合い方は、いま子育て中の家庭でいちばん話題になりやすいテーマのひとつかもしれません。見せないほうがいいと聞くたびに、なんとなく後ろめたい気持ちになる方も多いのではないでしょうか。

この記事では、公的な機関が示している「目安」を整理したうえで、0〜6歳の家庭で実際に回しやすいルールのつくり方を順番にまとめます。最初にお伝えしたいのは、今日たくさん見せてしまった日があっても、それで子どもの育ちが決まってしまうわけではないということ。大切なのは、毎日の中に「画面ではない時間」がちゃんと居場所を持っていることだと考えられています。

スクリーンタイムとは?「時間」だけで考えないほうがいい理由
スクリーンタイムとは、テレビ・スマホ・タブレット・ゲーム機など、画面を見て過ごす時間のことです。子育ての場面では「1日何分まで?」という長さの話になりがちですが、実際に子どもの体験を左右するのは、長さと同じくらい「何を見るか」「どう見るか」でもあります。
目安として知られている3つの提言
まず、よく引き合いに出される代表的な目安を並べてみます。いずれも家庭を縛るためのものではなく、判断のよりどころとして示されているものです。
- WHO(世界保健機関)は2019年、5歳未満の子どもの生活について、1歳未満のうちは画面を見せる時間を持たないこと、2〜4歳では座ったまま画面を見る時間を1日1時間以内にとどめること(少ないほどよい)を目安として示しています。
- アメリカ小児科学会(AAP)は、生後18〜24か月ごろまでは家族とのビデオ通話を除いて映像視聴を避けること、2〜5歳では内容の質が高いものを1日1時間程度にすること、そしてできるだけ大人が一緒に見て言葉を添えることをすすめています。
- 日本小児科医会は「子どもとメディア」に関する提言として、2歳まではテレビ・ビデオの視聴を控える、授乳中や食事中はテレビを消す、メディアに接触する時間の合計は1日2時間までを目安にする、といった考え方を示しています。
数字には幅がありますが、共通しているのは次の3点です。乳児期はできるだけ画面より人とのやりとりを優先する/幼児期は長さに上限を決めておく/食事中と寝る前は避ける。逆に言えば、この3つの線が引けていれば、5分10分の増減に一喜一憂しなくても大丈夫、という受け取り方もできます。
同じ30分でも、中身は同じではない
親が横で「わんわん、いたね」「これ、赤いね」と声をかけながら過ごす30分と、自動再生でひとり静かに流れていく30分は、子どもにとってはかなり違う時間です。研究の分野でも、大人が言葉を添えて一緒に見る視聴のほうが、言葉の学びにつながりやすいことが示唆されています。断定はできませんが、「画面を、親子のやりとりが生まれる場所にできているか」という視点は、分数を数えるより役に立つことが多いはずです。
そう考えると、画面を敵にしなくてもよくなります。もし内容を選ぶ余裕があるなら、テンポが速すぎず、同じ言葉が何度も出てくるような、子どもが口まねしやすいものが向いています。言葉のやりとりを増やしたいときは、絵本の読み聞かせが子どもに与える効果もあわせて読んでみてください。画面でも絵本でも、「大人の声が添えられている」という点は共通しています。

年齢別・付き合い方の目安(0〜6歳)
発達の段階によって、画面との距離感は変わります。ここでは0〜6歳を3つに分けて、家庭で意識しやすいポイントを整理します。
0〜1歳:画面より「顔と声」の時期
この時期の赤ちゃんは、人の顔の動きや声の抑揚から、まわりの世界を学んでいると考えられています。画面の映像は魅力的に見えても、赤ちゃんの反応に返事をしてくれるわけではありません。おすすめは、見せない時間を頑張るより、抱っこして声をかける時間を先に確保すること。離れて暮らす祖父母とのビデオ通話は、相手が反応してくれるやりとりなので、多くの提言でも別枠として扱われています。
2〜3歳:時間を決めて、「終わり」を見せる時期
言葉が増え、好きなキャラクターがはっきりしてくる時期です。この段階で大事なのは長さそのものより、始まりと終わりが毎回同じかたちであること。「1本だけね」「これが終わったらおしまいね」と先に伝え、終わったら一緒に消す。この繰り返しが、あとの年齢でのルールづくりをぐっと楽にしてくれます。
4〜6歳:ルールを「一緒に決める」時期
4歳を過ぎると、理由を聞いて納得する力が育ってきます。親が決めた約束を守らせるより、「何本まで見る?」「どこで終わりにする?」と子どもに決めさせるほうが、守られやすいという手応えを感じるご家庭も多いようです。決めたことを紙に書いて貼っておくと、叱る場面が「思い出させる場面」に変わります。

「もっと見たい!」で泣くときの5つの工夫
ルールを決めても、いちばん難しいのは「消す瞬間」です。ここでつまずくご家庭がとても多いので、切り替えを助ける工夫を5つ挙げます。全部やる必要はなく、家庭に合うものを1つか2つ選べば十分です。
1. 終わりを、始まる前に予告する
見せる前に「これを1本見たら、おしまいにしよう」と伝えておきます。楽しんでいる途中で急に取り上げられると、子どもにとっては約束を破られたのと同じです。先に伝えておけば、消す場面が「親の気分」ではなく「さっきの約束」になります。
2. 「時間」ではなく「区切り」で終える
「あと5分」は、時計が読めない年齢の子どもには伝わりにくい言い方です。それよりも「この歌が終わったらおしまい」「1本見たらおしまい」のように、目や耳で分かる区切りで終えるほうがスムーズです。自動再生の設定を切っておくと、この区切りがはっきりします。
3. 消したあとの「次」を用意しておく
画面を消すと、そこにあった楽しみが空っぽになります。「消したらお風呂に行こう」「ブロックの続きやろう」と次の楽しみを渡せると、泣く時間はぐっと短くなります。画面のかわりに手を動かす遊びを用意しておきたいときは、年齢別・知育玩具のおすすめも参考になります。
4. 消す役を、子どもに渡す
親が消すと「取り上げられた」になりますが、自分でボタンを押すと「自分で終われた」になります。押せたら「自分で消せたね」と一言そえるだけで、次の日が少し楽になります。
5. 親のスマホも、同じルールの中に置く
子どもは、注意された内容よりも大人の行動をよく見ています。食事中は家族全員がスマホを置く、と決めるほうが、子どもだけを注意するより通りやすいものです。なお、イヤイヤ期の切り替えそのものに悩んでいるときは、いやいや期の対応とNG対応もあわせてどうぞ。

寝る前の画面が眠りに影響すると言われる理由
多くの提言が共通して避けるようにすすめているのが、寝る直前の画面です。理由として、明るい光を浴びることで眠る準備が整いにくくなること、内容の刺激で頭が興奮したままになること、そして単純に寝る時間が後ろにずれてしまうことが挙げられています。
目安としては、寝る1時間前には画面をオフにして、部屋の照明も少し落とすという流れがよく紹介されています。厳密に1時間でなくてもかまいませんが、「お風呂→絵本→寝る」のように毎日同じ順番にしておくと、体が自然と眠る方向に向かいやすくなります。寝かしつけ自体に苦戦しているときは、子どもの寝かしつけのコツで習慣づくりの手順を紹介しています。

画面に頼ってもいい場面はある
最後に、いちばん伝えたいことを書きます。ワンオペの夕方、体調が悪い日、病院の待合室、どうしても手が離せない料理の20分——こうした場面で画面に頼るのは、手抜きではなく家庭を回すための判断です。親が少し息をつけたほうが、そのあとの時間はおだやかになります。目安は目安として持ちながら、守れない日があっても自分を責めないでいてください。

まとめ|我が家のルールは3行でつくれる
細かい表をつくらなくても、次の3行を紙に書いて冷蔵庫に貼るだけで十分に機能します。
- いつ・どれくらい見る(例:夕方の支度中に1本)
- 見ない場面(例:食事中と、寝る1時間前は消す)
- 終わり方(例:1本終わったら、自分でボタンを押して消す)
そして、この3行は親も一緒に守るものにしておくこと。長さを完璧に管理することよりも、「画面のない時間にも楽しいことがある」と子どもが知っていることが、いちばんの土台になります。